取らぬ狸の胸算用

思い込みが激しい

下村湖人『論語物語』

論語物語 (河出文庫)作者:下村湖人発売日: 2020/11/05メディア: 文庫 論語は「天の書」であると共に「地の書」である。孔子は一生こつこつと地上を歩きながら、天の言葉を語るようになった人である。天の言葉は語ったが、彼には神秘もなければ、奇蹟もなかっ…

虚構日記・起床編

雨の音で目が覚めた。消し忘れた部屋の灯りで視神経が擦り潰される感じがする。ごそごそと枕元のスマホを見ると午前6時も回っておらず、こんな明け方に起きたのは随分と久しぶりでどうしたものか頭が冴えない。昨晩はやや早く25時過ぎに寝ついてしまったので…

パーマネント・インテンション

2020年春頃からの未曾有のパンデミックにおいて、運の良いことに自分自身は現在まで大した実害を被っていない。無論、一刻も早く終息してほしいと心の底から哀切祈願しているが、とはいえ某ウイルスを契機に始まった多くの文化や風俗の中で、終息後もある程…

GARNET CROWなど

2か月くらい前に突然GARNET CROWの公式YouTubeチャンネルが出来て、過去のMVが40本以上アップされた。音楽には疎いのですが、GARNET CROWは宇多田ヒカルの次に好きなアーティスト…というか宇多田ヒカルとGARNET CROWくらいしか特別好きじゃないので、ちょっ…

越境すること

干支は12年だし1年は12か月だし、1ダース、というのにはやっぱり何かあるのかもしれない。スピリチュアルに興味はないが、心身の長期的なバイオリズムに12年という歳月もヒリヒリ効いているのだろうか。最近中学の頃をよく思い出す。 以下、多分にフィクショ…

最近見た映画(+α)など

祝・2021年。 年末年始はおじゃる丸的な感じでまったり過ごしつつ、取り憑かれたように『イモータルズ フィニクスライジング』(ギリシア神話舞台のオープンワールドRPG。面白いのでオススメ)をやってたりしたが、合間合間に珍しくいくつか映画を見たので感…

流行への文句

職場で『鬼滅の刃』の話になり、「あまり好きじゃない」(オブラート)と話したら、「意外。少年漫画だから好きかと思ってた」とちょっと見下した顔で言われた。 いや…舐めないで頂きたい、と憤りたい気持ちをグッとこらえて苦笑いだ。なぜなら私がやりたい…

遠藤周作『悲しみの歌』

小説の感想・書評ってずっと苦手で、良い悪いか好き嫌いくらいしか言うこと無いと思っているが、久しぶりに遠藤周作を読んだので…。悲しみの歌(新潮文庫)作者:遠藤周作新潮社Amazon『海と毒薬』の続編。なぜか未読だったため、『海と毒薬』を読んでから10…

サイコパスの道徳的責任

PCの整理をしていたら大学時代(2015年)のゼミ原稿が出てきた。学部生が書いたもののため粗削りだし信頼性もゼロに等しいけど、自分としては結構面白い気がしたので折角だから綺麗な形で置いておく。こういう勉強はもう全然できていないしできないが、自分…

結婚ラッシュを受けて

11月下旬あたりから知人の結婚報告が続いている。 入籍届に指輪を添えた写真がTwitterにあげられたり、既に終えた結婚式の模様が大変な高画質でFacebookで報告されていたり、急に「来年10月○日空いてる? 結婚式するから来て」とLINEが来たり(空いてるとか…

「語らない」語り

「芸人なら政治と宗教は語らない」と有吉がいつかどこかで言っていた。何でもこれは有吉の父親からの遺言らしい。いやどんな遺言だよと思うけど、有吉自身もこの遺言に納得して今なお旨としてるそうな。 確かに「商売相手に政治と宗教と野球の話はするな」っ…

あつまれ 母性の森

4月に購入してからほぼ毎日30分程度の日課として『あつまれ どうぶつの森』をやっている。どうぶつの森は+時代に初めてプレイし、以降シリーズタイトル半分くらいは購入しているが、あつ森は今まで以上に細く長く続けられそうな予感がしてる。というか今の時…

澁澤龍彦『快楽主義の哲学』

快楽主義の哲学 (文春文庫)作者:澁澤 龍彦発売日: 2019/04/26メディア: Kindle版澁澤龍彦(1928-1987)は別に好きって訳ではなく、澁澤龍彦に限らずフランス文学好きとは馬が合わない自信があるが、馬が合わないなりにも面白いと思う部分はある。これも何と…

最近読んだマンガ(+α)など

比較的最近に新しく読んだマンガの感想まとめ。メモ程度。 チェンソーマン チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:藤本タツキ発売日: 2019/03/04メディア: Kindle版面白い。特にレゼ編とか1巻で綺麗にまとまってて凄かったな。フェチや知性を見…

用語の変数

唖(おし)とか聾(つんぼ)とか跛(びっこ)とか、そういう文字が私は好きだ。古めかしい差別用語だとしても、古代の障碍者が藻掻き苦しむ姿がここに鮮やかに閉じ込められていると思うから。言語には人間が味わってきた感覚が保存されている。 最近私が気に…

シオラン『絶望のきわみで』『生誕の災厄』

久しぶりの読書記録。 シオラン(1911-1995)はルーマニアの思想家でアフォリズム作家。ペシミスティックで反出生的なその思想からニーチェやキルケゴールあたりの大陸哲学の一派として位置づけられるが、著作を読めばわかる通りシオラン自身には哲学という…

玄関を開けたらいる人

平日20時にインターホンが鳴り響くのは異常事態だ。危うくパソコンにお茶をベタベタ零しそうになった。 この時間の心当たりないピンポンなんて普通は居留守するのだが…一応と思いモニターを確認してみたところ、意外にも私服姿の若い女性の所在ない頭が魚眼…

不気味の谷の動物

猫 全体性(Gestalt)を持った一個のまとまりを凝視したりしているといつしか全体性が失われて認識がもみくちゃになる現象をゲシュタルト崩壊と言い、よくこうやって漢字なんかがサンプルとして出されるが、自分の場合動物を見ている時にも頻繁に起こる。 動…

読書家フォビア

文学好きを声高らかに自称する人間ほど文章が下手でキモいのは世界七不思議のひとつに数えられている。要は鈍感な文学オタクが一定の割合で存在する不思議。 思えば「ビブリオバトル」なる行事を初めて知った時はそこに乗り込んで血の海にしてやりたい激情に…

YouTubeあれこれ雑談

宇多田ヒカル『HIKARU UTADA Live TOP FAN PICKS』 8/31に宇多田ヒカル公式YouTubeチャンネルで「ファンが選ぶライブ映像ベスト」的な特集番組が組まれてて、9月いっぱいまでアーカイブも残すらしい。 1時間超の長い動画なので全部は覗けてないものの、久し…

ジョゼフ=キャンベル『神話の力』

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者:キャンベル,ジョーゼフ,モイヤーズ,ビル発売日: 2010/06/24メディア: 文庫 商品詳細より 世界中の民族がもつ独自の神話体系には共通の主題や題材も多く、私たちの社会の見えない基盤となっている。神話はなん…

京大と普通

京都大学を卒業して関東に来てから3年半が経ち、母校を外から見るようになって初めて気づいたことがある。というのも何やらこの世には「京都の大学生だった郷愁をブログや短歌でやたらエモく語る」という分野が存在しているらしい。そして、なぜか、不思議な…

良いけどウザい 太宰治

太宰治の『人間失格』を読んだのは恐らく中学1、2年の時だった…と記憶しているが、恥ずかしながらその時は結構感動した。やはり今より二回りくらい繊細で、ストレートな軟弱さもあったからだろう。とっくに成人した現在の自分が改めて『人間失格』のハイライ…

女性作家の母親描写

探してる訳じゃないのに妙に目について仕方ないのは、欠陥だからなんだと思う。母娘の確執ってのは昔からよくある定番テーマで、カタルシスを得るためかやはり女性作家が自身の経験を活かして取り扱ってることが多いけど、その一方で成功例は案外少ない気が…

『ショーン・タンの世界』と『アライバル』

ショーン・タンの世界 どこでもないどこかへ作者:ショーン・タン発売日: 2019/05/20メディア: 単行本(ソフトカバー)いま全国巡回中の「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ |」の公式図録。去年東京のちひろ美術館で開催されていて行けず終いに…

へその緒結び

ちょうど1年くらい前に女性観に関する記事*1を書いたのだが、意外なことに未だにそこそこ読まれている。まあこのブログの「読まれてる」はつまり全然読まれてないってことなんですけど。でもこのブログにしては読まれてる。このブログにしては 。「女性の女…

キケロ『友情について』

老年について 友情について (講談社学術文庫)作者:キケロー発売日: 2019/02/09メディア: 文庫 再読本。大学時代に岩波文庫版で読んで大層感動し、人と人との関係性に対する考え方を15度くらい変えさせられた思い入れの強い本なので、去年講談社学術文庫で新…

鬼滅の刃がハマらない

職場の人から借りて『鬼滅の刃』を一気読みした。 ハマらなかったなあ。いや、ハマらないというのは配慮と保守を含んだ表現だが、もう有り体に言ってしまうと、全然面白くなかった。壊滅的につまらない。 自分は普段「売れてる漫画」にはそれだけで信頼を置…

シェル=シルヴァスタイン『おおきな木』

おおきな木 作者:シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein 発売日: 2010/09/02 メディア: ハードカバー 半年に1回くらい、無性に絵本が読みたくなる。 母親の趣味で幼少期にちょっとした絵本英才教育を受けていたためだろう。今でも書店に行くと絵本コー…

「オンライン飲み」がなんか苦手

世の中で隆盛していても、自分は乗れない波がある。 世間との断絶を感じることなど誰しもいくつもあるものだが、最近の私にとってのそれが「オンライン飲み」だ。なぜ乗れないかと言うと、気に食わないからではない。いや、それもちょっとあるかもしれないけ…