取らぬ狸の胸算用

思い込みが激しい

コロナの先の杖

 祝・2024年。
 余計なことを言わないタモリのような人間になりたいとぼんやり志すようになってから早10年の年月が流れたが、果たして理想とする人間像にどのくらい近づけたかというとむしろ遠ざかっている。しかし、この半年間ほどブログを一切更新しなかったことで、もしかしたら読者諸氏からは、この饒舌なブログの更新頻度が日に日に下がり、果ては半年もの間放置するという有様を見て、さも私がすっかり余計なことを言わない泰然自若とした人間に成長を遂げたと思われていたかもしれない。そう考えてみれば、私から見て余計なことを言わない人というのも、実は余計なことを言わないのではなく、ただサボッているだけの人かもしれないということをふと改めて発想した。それならばあまり尊敬する必要もないし、サボってばっかりもいられないので、また立て直すこととする。


 2023年は結婚の年であった。実は結婚した。それこそ昨年1月くらいから準備が始まり、付随するイベント事や手続きを世間的な順番に則ってあくせく進め、漸く形を成すまでに丸1年を必要とした。
 人間社会には不思議な道理がいくつもまかり通っているが、婚姻にも多くの不思議がつきものだ。それまで様々な深謀遠慮から私生活に踏み込むような質問を避けてきたであろう人々も、結婚というワードが飛び出すと唐突にそのロックを解除し始める。結婚というのは自分を数える構成単位が変わる大きな変化*1だ、ある程度自分に対する社交の取扱いが変わるのは構わないが、あまりに露骨な人には辟易する。少し前にコロナを発症し仕事を1週間ほど休んだのだが、復帰後、体調不良としか連絡していなかった仕事上の知り合い複数人から、「おめでたかと思っちゃいました」とニコニコ告げられた。その人達にはそもそも結婚したこと自体伝えていなかったのに、である。こういうことを言ってくるのは決まって同性だが、身体の成熟期を過ぎた年齢の女性というのは大なり小なり、年下の同性の体をなぜか自分も共有しているかのような奇怪な万能感を持っている。この迷惑千万な身体感覚のルーツについては前々から折に触れて考えさせられるところだ。もう少し考えが深化したら形にする。


 コロナも困ったもので、私はこのたびが初めての罹患だったがこの期に及んで自分が罹るとは全くもって油断していた。頭痛、めまい、吐き気、喉の痛み、鼻炎、咳、痰、悪寒、全ての体調不良が一挙に襲い掛かり、特に唾を呑み込むたびの引き千切られるような喉の激痛は、安直にも生きていることへの神経症的絶望を感じさせた。独身時代とは違って咳をしても一人ではないのは良いが、咳をしてもコロナなのである。当初はせっかくまとまって仕事を休むのだから自分時間の充実を図ろうと夢見たのも束の間、それどころではない。ディスレクシアと言う程の症状はなかったが、どんな娯楽でさえ喉の激痛を少しも忘れさせてくれなかった。一端のブロガーに倣って2023年の本やらゲームやらその他作品のランキング記事なんかも書こうかと思っていたが、苦痛に呻きながら病床に伏しているうちに結局サボった。それを「おめでた」とか弄られるんだから勘弁してほしい。
 人なんて所詮ウイルスの乗り物、罹患中は蠢く虫になった気分を味わう。回復から一定期間が過ぎた今でさえ本調子ではない。恐ろしいウイルスなので皆さんも気をつけてください。
 私に関しては2023年の終わりにそうして最後の厄を落としたとも言えるし、心機一転でもないが、今年の努力目標に向けて取り組んでいく。謹賀新年。



少し寄付。

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あとは余計な余談。

*2023年は結婚の年だと書いたが、より厳密に修正すると「結婚」と「ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom」の年だった。あまりこうした陳腐な言い方は好きではない私だが、ゼルダの伝説 Breath of the Wildおよびゼルダの伝説 Tears of the Kingdomは、それをプレイしているかしていないかで人を区別したくなるくらいの傑作だった。クリア率80%にまで到達した現在は、やることと言えばひたすら残りのコログちゃんを集めるだけになってしまったが、それでも面白い。任天堂宮本茂は「アイデアというのは複数の問題をいっぺんに解決するものだ」と言ったというが、そういう思考の究極の成果物がゼルダtotkだね。


*私の最も好きな漫画であるところの「ヒストリエ」の新刊が一向に発売しないので、既に全て電子で持っているのだが今後の期待を込めて紙でも収集することにした。そこで少し驚いたのだが、紙版ヒストリエはもはや品薄状態で、リアル書店で全巻揃えることはまず不可能、Amazonでも一部の巻は新品2000円にまで高騰している。かくいう私は何とか各所から寄せ集めて全巻定価・新品で調達する僥倖にあやかったが、休載中とはいえヒストリエほどの作品が絶版になる一方で、訳のわからないなろう転生系オタク漫画が際限なく書店の棚に並んでいることにはそこそこの悲しみがある。

去年はマケドニア関係で2冊の大著が出たみたいだ。なかなか個人で買うのは難しい価格だが、気合入れて図書館で借りて読んでみたい。新婚旅行をギリシャにすることも画策したりする。


*今年は5年振りに宇多田ヒカルのライブツアーがやるようなので楽しみだ。
 そういえば昨年の新曲「Gold~また逢う日まで~」の感想も特にここでは触れていなかった。あれは良い曲だが近年の傾向に浸かったまま脱してはいないのでそこまで好みではない。近年の宇多田ヒカルは自分や大切な人を信じることで得られる強さ優しさをよく歌っており、それぞれ宇多田ヒカルらしい回り道もあって良い曲ではあるが、たまに空疎な綺麗ごとに聴こえてしまう時がある。しかしそういう時は私が宇多田ヒカル個人の華々しい才能や財力、交友関係を曲の裏に見てしまっている場合が多いと自覚しているので、無粋な文句かも。
 これ系のテーマの曲は私の中で「あなた」が金字塔になっているから、どうしても二番煎じに感じるのだろうか。今度のベストアルバムでもし昔の曲を再収録するのだとしたら尚のこと嬉しいけど流石にそれはないかな。

*1:この変化には少々狼狽し、慣れるまでに暫くかかった。