取らぬ狸の胸算用

思い込みが激しい

虚構日記・発達編

今頃あいつどうしてるだろう。どこで何やってんだろうか。大人になっても、未だ搾り取られているんだろうか。 そういう考えが不意に頭に過ったのは、別に初めてのことじゃなかった。実を言うと年に一度か二度程度、あの子のことは思い出す。しかし、そのたび…

高学歴とモテ

彼女は頭が悪いから (文春文庫)作者:姫野 カオルコ文藝春秋Amazon あらすじ(上記リンク先より引用) 横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。横…

『モーリタニアン 黒塗りの記録』

www.youtube.com 話題の『DUNE』か『最後の決闘裁判』どちらかを見に行きたいと思っていた筈なのに、気づいたらこれを見ていた。事前に調べた予告映像ではリーガルドラマ、しかしあらすじを読むと社会派陰鬱映画のように見えたので、はてどっちの系統なのか…

佐野洋子『シズコさん』

シズコさん (新潮文庫)作者:洋子, 佐野新潮社Amazon 上記リンクより引用 四歳の頃、つなごうとした手をふりはらわれた時から、母と私のきつい関係がはじまった。終戦後、五人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後三人の子を亡くした母。父の死後、女手一つ…

道なき道のための宣言

10月。いやー、まさかだったね。まさかこんなことになるとは。え? いや総裁選のことじゃないですよ。結局岸田氏か、と聊か肩を落としたのは事実だけど、まさかって程に予想できないことじゃない。だから……いや、小室圭帰国はもっと違うよ。そりゃ彼は面白い…

人のブログも1015日

超絶怒涛の秋めきによりもう9月も半ばになった。過ごしやすくて良い。雨さえ降らなければ今の時期が1年の中で最も生活に適していて好みだが、雨が多いのがマイナス要素として大きすぎるのが難点だ。今日も今日とて雨が降っているけれども、つくづく雨の日の…

最近観た映画

直近1か月くらいに見た映画のまとめ。例によってネタバレ満載。 『天才マックスの世界』『ファンタスティックMr.FOX』 天才マックスの世界 (字幕版)ジェイソン・シュワルツマンAmazonファンタスティック Mr.FOX(字幕版)Bill MurrayAmazon 私はウェス=アンダ…

虚構日記・空想編

仕事帰り午後8時のくたびれた電車に強烈な香ばしいチキンの匂い。それも、揚げて香辛料をまぶした劇薬のチキンだ。考えるより先に刺激が鼻から舌に伝わり、よく知った脂っこい味が涎をだらっと分泌させる。目線は下ろしたままチラリ辺りを見渡すと向かいの長…

『あずみ』ほか好きなマンガなど

3年前くらいまで小学館の漫画アプリ「マンガワン」のユーザーだった。確かサービス開始から間もない頃に『モブサイコ100』の最新話を追うためにインストールしたのだが、マンガワンはモブサイコはじめ連載漫画のレベルが高い上に、往年の小学館名作漫画の再…

某へのぼやき

このところ更新が減っていたのは、多忙だったと言うよりは単純に書くことがなかったせいだ。他人様の創作レビューばかりやるのも微妙だし、日記のようなものを書こうとしてもどうも手癖で冗長になりすぎるので気が乗らないしで、改めて考えると私のような何…

翻訳とオリンピック

1つ前の記事で突如として高校英語の授業の予習が始まったことにいささか豆鉄砲を食らった読者がいるかもしれない。翻訳って文章の練習になるし、英語のリハビリも出来て一石二鳥(鳥だけに)、とふと思い立ち余裕綽々で取り掛かったものの、いざやってみると…

グリム童話『黄金の鳥 The Golden Bird』(拙訳)

昔々、世にも美しい庭を所有する王がいた。それはなんと黄金の林檎の生る庭であり、その珍しい林檎の数は王国によって常に正しく管理されていた。しかしある年、ちょうど林檎が熟し始める季節、毎晩夜が明けるたびに林檎が1つ減っていることが発覚したのであ…

古田徹也『はじめてのウィトゲンシュタイン』

はじめてのウィトゲンシュタイン NHKブックス作者:古田 徹也NHK出版Amazon 勉強として読んだのでメモ。 ウィトゲンシュタイン、大学の頃に『論理哲学論考』を図書館で借りて数10ページ字面を追ってみたものの何もわからず返却したという苦い思い出があり…

新庄耕『狭小邸宅』

狭小邸宅 (集英社文庫)作者:新庄 耕集英社Amazon 勧められて拝読。暫く、人から勧められたものを愚直に読んだり見たりすることの意義を再確認している。この小説も良かった。 名門大学を卒業し、目標もなく漂流するように入った不動産会社。数字だけがものを…

徒然なるままに、引越し

引っ越しするので粛々と準備している。暫く前から住環境を変えたいと思っていたのたが、いざ引っ越すとなると体が強張ってきた。物理的にも感情的にも、単純に引っ越しが面倒くさいのもある。 感じること、考えることが多すぎるのは面倒くさい。AIに丸投げし…

宇多田ヒカル『PINK BLOOD』

宇多田ヒカルの新曲フルMV出ましたね。www.youtube.com 2020年以降の曲だと今のところ1番好み。ここ2年弱のリリース曲にはあまりしっくりこないことが個人的には多かったから、その反動もあってPINK BLOODは余計に良く感じた。私生活においてもここ最近停滞…

ぼくらの非モテ研究会『モテないけど生きてます』

「本読んだらできるだけ都度感想書く」と以前宣言したが、当然、続いていない。やっぱり毎回書くのは疲れるから無理だ。気を取り直して、書きたい時に書きます。 モテないけど生きてます 苦悩する男たちの当事者研究作者:ぼくらの非モテ研究会青弓社Amazon書…

最近のマンガ・ちょっとアニメなど

ザッと振り返りメモ。ネタバレ過多。 『チェンソーマン』 チェンソーマン 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:藤本タツキ集英社Amazon 前も書いたけど第1部の公安編完結したので改めて。面白かった~。ただラスト、マキマさんという第1話からあからさまにヒ…

General Positioning System

一部の若者の間で、仲が良い友達とGPSを共有するのが流行っているらしい。あるジャニーズの人と人気若手俳優がGPSを共有しているらしく、そのことでネットの女性ファンが喜んでいた。何から何まで理解不能という、ここ最近の衝撃新事実である。 SNSネイティ…

虚構日記・望郷篇

思うに田舎者ってのには、解けない呪縛がかかってるんだ。そんなこと言ったら誰しも同じ、都会者にだって都会者の背負うものがある、と言われるだろうし、実際そりゃあそうだろうが、ただとにかく田舎者にだって田舎者特有の呪縛がある。そして実家に帰るた…

筒井康隆『モナドの領域』『ジャックポット』

あの筒井康隆も今年で御年87歳になるそうで、恐らくもう死まで年読み、月読み、秒読み段階だろう。そんなわけで直近に出された本は存命のうちに読んでおこうと思い立ち、GWに続けて2冊読んだ。 『モナドの領域』 モナドの領域作者:筒井 康隆発売日: 2015/12/…

ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『フライデー・ブラック』

フライデー・ブラック作者:ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー発売日: 2020/02/03メディア: 単行本 骨太で冷静、爆発的。すばらしい。アメリカの、そして我々の現在を肌で生々しく、しかしデジタル時計みたいに正確に測り知れる珠玉の短編集。これ以上なく政…

小説について

2年くらい前から小説を書いてまして、今回、半年前に文学賞に応募したものの結果が出たのと、あと新作も書き終えたので、区切りとして独り言じみた反省をば。 半年前に書いた小説は今まで書いた中で一番、いやそれどころか今までの数本とは比較にならない程…

大藪春彦『ヘッド・ハンター』

ヘッド・ハンター (光文社文庫)作者:春彦, 大藪発売日: 2020/08/06メディア: 文庫 あらすじ(Amazonより) 晩秋のアラスカ荒野に、独り獲物を追う男がいた。杉田淳、三十四歳。元傭兵の彼の標的は、人間ではなく野生動物たちだ。大ヘラ鹿、グリズリー、バイ…

J.M.クッツェー『マイケル・K』

マイケル・K (岩波文庫)作者:J.M.クッツェー発売日: 2015/04/17メディア: 文庫 あらすじ(Amazonより) 土のように優しくなりさえすればいい―内戦の続く南アフリカ、マイケルは手押し車に病気の母親を乗せて、騒乱のケープタウンから内陸の農場をめざす。ひ…

ドルオタ、かくも不可思議な存在

昔からわからないんだよなドルオタって。いや、わからないものを無理やりわかろうとしなくていいだろうとずっと等閑にしてきて今があるのだが、そうやって洞察を蔑ろにしていたツケか、発見するのが随分遅れた。この前久々にテレビを見てみたら「言葉にする…

アゴタ=クリストフ『悪童日記』

新年度です。モンハンライズを買いたい気持ちを賢明・懸命にねじ伏せて読書をする。 今まで読書記録は気が向いた時だけ書いていたが、やっぱりインプットとアウトプットちゃんと併せてやった方が良いなという気持ちになってきたので、これから暫くは(積読消…

匿名幾何学

長いことブログ名にしっくり来なくて人知れず試行錯誤していたのだが、今度こそこれで行くと決めた。そういえば最初からアイコンは信楽焼きのタヌキだった訳だし…後講釈になるが元々タヌキはかなり好きな動物で、特にペットとして遇されるに最適な姿形、個体…

ミュージアム門下生

去る2月17日は安吾忌だった。2月17日は【安吾忌】2月17日は『堕落論』『白痴』などで知られる作家・坂口安吾の命日。1906年新潟市生まれ。純文学のほか、歴史小説や探偵小説、随筆など多彩な執筆活動を展開。戦後の日本社会で活躍し、太宰治らとともに「無頼…

読書にまつわる雑多な所感

万人にとって避けがたくも兎角避けたい営みの一つに自己紹介というものがある、と思っていたが、意外とそうでもないらしい。宇宙ゴミのように、いえ、夜空を瞬く星々のように無数に存在する種々のSNSアカウントの個人プロフィールを無作為に覗いてみると、字…