取らぬ狸の胸算用

思い込みが激しい

Walking On The Moon (Police, 1979)


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Giant steps are what you take
Walking on the moon
I hope my legs don't break
Walking on the moon

We could walk forever
Walking on the moon
We could live together
Walking on
Walking on the moon

Walking back from your house
Walking on the moon
Walking back from your house
Walking on the moon

Feet they hardly touch the ground
Walking on the moon
My feet don't hardly make no sound
Walking on
Walking on the moon

Some may say
I'm wishing my days away
No way
and if it's the price I pay

Some say
Tomorrow's another day
You stay, I may as well play

Giant steps are what you take
Walking on the moon
I hope my legs don't break
Walking on the moon

We could walk forever
Walking on the moon
We could be together
Walking on
Walking on the moon

Some may say
I'm wishing my days away
No way, and if it's the price I pay

Some say
Tomorrow's another day
You stay, I may as well play

Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up
Keep it up, keep it up

歌詞は以下より引用:
Musixmatch - Song Lyrics and Translations

まるで巨人の1歩だな
月の上を歩くみたいに
脚が壊れなきゃいいな
月の上を歩くみたいに

僕らこのままずっと歩けそう
月の上を歩くみたいに
一緒に暮らしていけそうだ
まるで月の上を
歩いてるみたいに

君の家からの帰り道
月の上を歩いてるみたい
君の家からの帰り道
月の上を歩いてるみたい

足が地面に着かないんだ
月の上を歩いてるみたいに
足音もほとんどしなくて
まるで月の上を
歩いてるみたいに

周りは言うんだ
僕が現実を見てないって
そんなんじゃない
仕方ないことなんだろうけど

他人は言うんだ
明日は明日の風が吹くからって
僕は君だから遊びたいのに

まるで巨人の1歩だな
月の上を歩くみたいに
脚が壊れなきゃいいな
月の上を歩くみたいに

僕らこのままずっと歩けそう
月の上を歩くみたいに
一緒に暮らしていけそうだ
まるで月の上を
歩いてるみたいに

周りは言うんだ
僕が現実を見てないって
そんなんじゃない
仕方ないことなんだろうけど

他人は言うんだ
明日は明日の風が吹くからって
僕は君だから遊びたいのに

このままがいい このままで…
このままがいい このままで…

*********************************

 Police時代の曲。ツアー続きの生活の中で部屋をぐるぐる歩きながら考えたらしい。
 自分の好きな人と付き合う楽しい日々を送っているものの、世間とは隔絶し、周囲からどこか白けた目で見られていることを自覚している。この生活が続けばあまり良くない結果に至ることにどこかで勘付いているが、この重力を忘れるくらいの多幸感に浸かっていたい、そういう若者らしい歌詞と思う。アホっぽいようで達観しているというか、達観しているようでやはりアホというか。浮かれて重力の感覚や方向感覚を失い、周囲の言うことがろくに耳に入らない宇宙人になった人の主観的世界がちょっとアイロニックに織り成されている。単調だが妙な渋みもあって面白い。

 ちょっと話ズレるけど、周囲から見ると明らかに真剣に相手にされてないのに、そんな人に破滅的にのめり込んじゃう人って一定数いますよね。そういう人を製造する側の人間が一人知り合いにいるのだが、話を聞く分には極上のエンターテイメントで愉快なものだ。とはいえ、当然ながらあまり褒められた人間関係じゃない。話から類推するに、そういう不正義のシステムに巻き取られてしまう人というのは、自分に今後これ以上の魚は釣れない、これ以上の人とは出会えないという後ろ向きな確信に突き動かされており、その確信によって相手の魅力を自分で勝手に拡大増幅されている。そのことに自覚もありそうなのに、性根の不安症みたいなものがどんどんその確信を補強させる方向に働いて後に引けなくなってしまう。

 月を歩いてるみたいな美しい話では全くないのに、似た無重力感に捕らわれてしまうのか。そういう感覚って周囲から見たら愛とは程遠い行動原理に見えるが、明確な境目などはない訳だから本人にとってそんなことは重要ではないのは当たり前だ。むしろ自分にしかわからないという感覚がより魅惑的に感官に響く筈。他人からすれば「keep it upすなー!」と言いたくなるがkeep it upしたいんだから仕方ないよね。

Stolen Car (Sting, 2003)


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Late at night in summer heat.
Expensive car, empty street
There's a wire in my jacket. This is my trade
It only takes a moment, don't be afraid

I can hotwire*1 an ignition*2 like some kind of star
I'm just a poor boy in a rich man's car
So I whisper to the engine, flick*3 on the lights
And we drive into the night

Oh the smell of the leather always excited my imagination
And I picture myself in this different situation
I'm a company director, two kids and a wife
I get the feeling that there's more to this one's life

There's some kind of complication, he tells her he's alone
Spends the night with his lover, there's a trace of her cologne
And the words of his mistress*4, as she whispers them so near
Start ringing in my ear

Please take me dancing tonight I've been all on my own*5
You promised one day we could its, what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light
Take me dancing, please take me dancing tonight

I imagine his wife, she don't look nothing like a fool
She picks the kids up form some private school
She remembers what he told her, he was late and worked alone
But there's more than a suspicion in this lingering*6 cologne
And the kid's just won't be quiet and she runs a traffic light
And she drives into the night

Please take me dancing tonight I've been all on my own
You promised one day we could it's what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light
Take me dancing, please take me dancing tonight

So here am I in a stolen car at a traffic light
They go form red to green and so I just drive into the night

Please take me dancing tonight I've been all on my own
You promised one day we could it's what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light
Take me dancing, please take me dancing tonight

歌詞は以下より引用:
Musixmatch - Song Lyrics and Translations

しけこんだ夏の夜遅く
ガラガラの通りに高級車が1台
ジャケットに仕込んだワイヤーが商売道具
すぐ終わるからビビらなくていい

ワイヤーが星々みたいな火花を散らす
俺は金持ちの車に乗った貧しい少年
エンジンに囁いてライトをつける
そうして夜に向かって走る

皮の匂いはいつも想像力を刺激する
違う状況の違った自分
俺は会社の重役で 子供が二人と妻がいる
しかしどうやら話はそれだけじゃない

複雑な問題だ 妻には君だけと言いながら
他の女と夜を過ごし コロンの匂いをまとってる
だって女が言うんだよ 耳元で囁いた彼女の言葉が鳴り止まないんだ

今夜はダンスに連れてって 私はいつも一人なの
約束してくれたでしょ 電話でそう言ってたじゃない
私は愛に囚われて いつもライトが当たらない
ダンスに連れてって 今夜はダンスに連れてって

今度は妻を想像してみる 彼女はバカじゃないだろう
私立の学校に車で子供を迎えに行く
「仕事で帰りが遅くなる」旦那にそうやって言われたからだ
しかしコロンの残り香が疑いをどんどん強くする
子供が静かにしてくれず 彼女は信号を抜かしてしまう
そうして夜に向かって走る

今夜はダンスに連れてって 私はいつも一人なの
約束してくれたでしょ 電話でそう言ってたじゃない
私は愛に囚われて いつもライトが当たらない
ダンスに連れてって 今夜はダンスに連れてって

かたや盗んだ車で信号待ち
赤から緑に変わったら 俺も夜に向かって走る

今夜はダンスに連れてって 私はいつも一人なの
約束してくれたでしょ 電話でそう言ってたじゃない
私は愛に囚われて いつもライトが当たらない
ダンスに連れてって 今夜はダンスに連れてって

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 なんといっても歌詞が面白くてStingで一番好きな曲。先日のライブでは歌われず残念だったが、今も仕事中に車でよく聴いている。

 高級車の窃盗を生業とする男の妄想の歌であるが、短い中に技巧が詰め込まれており幾重にも投影された人間劇が面白い。貧しく暗い仕事をする「俺」が、盗んだ高級車の中で持ち主の生活を事細かに妄想し、自虐じみた陶酔に浸っている。
 「ダンスに連れて行って」とせがむのは、表面的には妄想上の自分の浮気相手の台詞だが、妻や「俺」の心情としても読み取れる。男の妄想には欲望が仔細に投影されており、会社の重役という華々しい身分になって妻と二人の子供に囲まれておきながら、美しく孤独な愛人という蠱惑的・背徳的な魅力にも放蕩する。
 いま自分が盗んで乗っているこの車の中で繰り広げられた情事や事件を想像して興奮する…っていうのはわりと皆わかる感覚だと思うが(盗むとかないけど)、それを歌にする発想が面白いし、妄想からも「俺」の実際の人生の陰部が垣間見え、それらを纏いながら振り払うように夜道を走っていく車の鋼鉄が最後に喚起される…といった優れた構成になっている。
 poor boyは比喩かと思ったが、何度も聴いていると本当に「俺」は結構若いのかも。different situationの自分って言ってるから、違う人生を歩んだ(同い年の)自分の妄想と考えるのがまあ妥当ではあるが、仮に「俺」が若くてもそれはそれで妄想先の「会社の重役」との差が尚更開いて良い気がする。その若さで人生が決まってしまっている絶望みたいなのが踏まえられる。

 なおhotwire an ignitionというのは、ワイヤーや針金でイグニッションインターロックをつなげることで車のキーなしにエンジンをかける方法だそうで、実際のやり方の動画があった(↓)。修理工のほかに、一般人でも鍵をなくした時なんかはこういう発進を試したりするようだが、いかにも悪いヤツらがやってそうでカッコイイ技術。この曲にピッタリで良いね。

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*1:エンジンをかける

*2:点火装置

*3:ピンとはじく

*4:愛人

*5:on my own:ひとりぼっち

*6:linger:後に残る

Loving You(Sting, 2021)


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You say that I don’t listen
That I don’t give you no respect
You took your love to some other place
Now, what did you expect?

We made vows*1 inside the church
To forgive each other’s sins
But there are things I have to endure
Like the smell of another man’s skin

If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is
If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is

You say you wanted children
And you would grow into a mother
But in my mind’s eye,
I would see you In the arms of another
I am given to jealousy
I’ve been given to violence
But I could never raise a hand in my defence
So I suffer here in silence

If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is
If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is

I pray the waters of forgiveness
Will rain down on you and me
Just like newborn babies
In the cradle*2 of a tree
And we will walk in righteousness*3
We will walk in rain and thunder
And what God has joined together here
Let no man put asunder*4

If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is
If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is

If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is
If that’s not loving you,
I don’t know what is (I don’t know what)
If that’s not loving you, then tell me what it is...

歌詞は以下より引用:
Musixmatch - Song Lyrics and Translations

僕が聞く耳を持ってないとか
敬意が感じられないとか
そう言う君は移り気だ
何を期待しているのやら

僕らは教会で誓いを立てた
お互いの罪は許し合おうと
しかし耐えねばならないこともある
例えば別の男の肌の匂い

これが愛情じゃないなら
僕には愛はわからない
これが愛情じゃないなら
僕に教えてみてほしい

子供が欲しかったんだろう
そしたら母親になれたのにって
しかし僕の目は見てしまう
別の男に抱かれる君を
僕は嫉妬に塗れた筈だ
君に暴力を振るわれたって
一度も殴り返さなかった
黙りこくって苦しんだ

これが愛情じゃないなら
僕には愛はわからない
これが愛情じゃないなら
僕に教えてみてほしい

赦しの水が僕らに降り注がんことを
僕らはゆりかごで眠る新生児
僕らは公正を歩くんだ
僕らは雷雨を歩くんだ
神が僕らを結び給うた
誰も引き離さないでください

これが愛情じゃないなら
僕には愛はわからない
これが愛情じゃないなら
僕に教えてみてほしい…

*********************************

 先日、Stingのライブに行ってきた。
 ああいう場に出ると客層とのテンションの違いに若干疲れるが、流石にStingは良かったね。
 音源で聴いていると渋い子守唄のようなイメージのStingだが、現地で聴くととても御年71歳とは思えぬパワフルな声量だ。ビジュアル的にも(まあお爺さんではあるが)二の腕ムキムキだし、遠目で見るとほぼ松本人志と見分けがつかないフォルムである。

 20曲くらい歌われたので正直知らない曲も多かったのだが、熱の残っているうちに自分の理解のために翻訳でもしたいなと思い立ったので、暫く連投する。単なる歌詞和訳だけでなく私見を付すことで権利の問題をある程度回避できるということも付け焼刃で学んだため、このようにコメントも残すこととする。

 「Loving You」は今回のライブで歌われており、例によって知らない曲だったのだが、大変に気に入ったので帰宅後すぐに曲名を調べて20回くらい聴いた。最新アルバム「THE BRIDGE」(2021)の収録曲だそうだ。
 同名の曲が死ぬほど存在しそうなありふれた曲名だが、歌詞はありふれてなく面白い。夫婦生活を通して冷め切ったかのように見えて、そうとも言えない愛情の形の妙が描かれている。男は静かに孤独に妻を愛すが、その愛し方は閉鎖的かつ一方的であるがために、妻はその表現方法に不満がある。歌詞では妻は多情であるとされ、他の男の影が見え隠れしているものの、その見え方が客観的かどうかは訝しいところと思う。これはこの曲に限らずライブを通して改めて感じたことだが、Stingの歌詞は男の偏執的な愛を歌っていることが多い。

 妻は子どもを望んでいたようだが、夫の嫉妬心がそれを許さない、というのは面白い。悋気な誇大妄想狂と言うと簡単だが、妻に子どもという拠り所を作らせないことで、妻の人生の選択肢を奪う愉悦も味わってるんじゃないかな。妻の浮気への復讐でもあり、自分の寂しさの埋め合わせでもある。でもそれだって愛じゃないかと。確かにそうで、世の中の愛って結構そんなものだろう。不気味で深い愛情の歌だ。

*1:誓い

*2:ゆりかご

*3:正義

*4:バラバラに